食料、医薬品、工業原料など、私たちの生活に深く関わる植物。近年では、品種改良技術の進歩により、新たな機能や特性を持つ植物が続々と誕生しています。
しかし、従来の品種登録制度では、育成者の権利を十分に保護することが難しいケースも存在しました。そこで導入されたのが、「植物特許」制度です。
1. 植物特許とは?
植物特許とは、特許法に基づいて、発明性のある新規な植物品種を独占的に権利化できる制度です。従来の品種登録制度と異なり、植物の形態だけでなく、機能や特性も保護対象となります。
2. 植物特許のメリット
- 育成者の権利保護の強化: 従来の品種登録制度よりも強固な権利保護が可能となり、育成者の投資や研究開発を促進します。
- イノベーションの促進: 植物特許制度の導入により、新たな品種の開発競争が活性化し、社会全体の発展に貢献します。
- 消費者への利益: 植物特許制度により、高品質で機能的な植物が開発され、消費者の生活を豊かにします。
3. 植物特許の対象となる品種
- 新規性: 既存の品種と異なる特徴を持つ品種であること
- 進歩性: 既存の品種よりも優れている特徴を持つ品種であること
- 発明性: 従来の知識や技術では容易に得ることができない特徴を持つ品種であること
4. 植物特許取得の流れ
- 特許庁に特許出願
- 特許庁による審査
- 審査合格: 特許権付与
- 特許権存続期間: 20年
5. 海外における植物特許制度
欧米諸国やアジアの一部地域では、日本よりも早く植物特許制度を導入しています。近年では、途上国でも植物特許制度を導入する動きが活発化しています。
6. 植物特許制度の課題
- 倫理的な問題: 生命体である植物を特許化する倫理的な問題が議論されています。
- 中小企業への影響: 大手企業による植物特許の独占が懸念されています。
- 生物多様性の喪失: 特許取得に有利な品種ばかりが開発され、生物多様性が失われる可能性が指摘されています。
7. 植物特許制度の今後
植物特許制度は、植物の革新を支える重要な制度ですが、同時に様々な課題も存在します。これらの課題を克服し、持続可能な社会の発展に貢献できる制度へと発展させていくことが求められています。